【原村】認知症ケア研修の勉強会をしました!

認知症の行動と心理症状について

認知症ケアを実践する上で、基本知識となる「行動」と「心理症状」を示す『BPSD』という概念をおさらいしました。

○行動とは?
・介護士や他の利用者様への攻撃行動
・施設内を夜間でも歩き回る
・突然、不穏やイライラする
・手で食事を食べる
・感情的な言動

○心理症状とは?
・人形が子どもに見える幻覚
・妄想
・気分が落ち込んでやる気が起こらない
・不安

上記の行動や心理症状を『BPSD』と呼びます。

BPSDの背景には、認知症がある人は、失くすはずのない物を頻繁に失くすため、探し物に長い時間と労力を費やすため、不安や焦りがあります。

認知症がある人の気持ちを疑似体験しました。

「この勉強会の事前アンケートを提出することになっていましたが、野溝さんだけ出していません。なんでですか?」

会場に緊張が走りました。

沈黙の時間が1秒また1秒と続きます。

私は焦パニック状態。

「なんで私だけ提出していないの?汗」
「え…聞いていないけど…」
「どうしよう…どうしよう…」

不安や罪悪感という感情で胸が一杯になりました。

もしここで講師の方から「野溝さん!なんで提出していないの!言ったでしょ!」と怒られたり、責められたり、怒鳴られたりしていたら泣き出したり、怒り出していたかもしれません。

結局、これはデモンストレーションだったことで、私の気持ちは不安から解放されました。

この疑似体験は、まさに”認知症がある人”と”ケアをする介護士”を表現した例です。

認知症がある利用者様は、”何かをしたこと”について忘れています。それが3秒前だったとしても忘れているかもしれません。

物事を忘れた状況下で怒られたり、大声を出されたり、責められたりすると、不穏や感情的になってしまうわけです。

認知症ケアを行うための3つの心構え

認知症がある人をケアをする場合の心構えは3つです。

①本人の気持ち、言葉、想いに向き合う
②本人の症状が進行しても、自主活動が続けられるように工夫する
③症状が進行しても、本人の言葉(想い)を汲み取りケアをする

具体的な認知症ケアの実践方法とは?

記憶障害のケア方法

記憶障害とは、新しく経験したことを記憶に留めておくことが困難になること。進行すると思い出すことも難しくなる。

・夕食を食べた30分後には「夕食はまだか?」と尋ねる
・トイレに行った10分後にまたトイレに行く

  1. 話すスピードは適切か
  2. 1度に多くのことは伝えていないか
  3. 繰り返し伝えること。またできる力を信じて関わっているか
  4. 視覚的に理解できる・気がつける工夫をしているか

見当識障害のケア方法

見当識障害とは、時間や場所、人物の特定が難しくなること。

・夜23時なのに「もう朝か?」と聞く
・「ここは○○(地名)?」と何度も聞く
・家族が誰なのか忘れる

  1. 日付や時間、場所が必要なときに伝えられているか。また、時間を意識できるような有効的な声かけができているか。
  2. 視覚的・聴覚的に理解・気付ける環境作りができているか

実行機能障害のケア方法

実行機能障害とは、計画性や順序立てたり、物事を具体的に進めていく能力が損なわれること。

・トイレでズボンの下げ方がわからない
・お風呂の入り方がわからない
・電気ポッドからお湯を出す方法がわからない

  1. 今、何をしているか伝えているか。次の動作がわかるような言葉かけや工夫をしているか。行動の最初を手伝ったり、きっかけ作りをしているか。

失効・失認のケア方法

失効とは、麻痺がないのに日常の熟練動作が難しくなること。

・パジャマが着れない
・草むしりができない
・これまでできていいたのにご飯が炊けない

失認とは、視覚障害がないのに、見たものの理解や把握が難しくなること。

・何十年も買い続けたスーパーのお菓子が”お菓子なのか”わからない
・下着と紙パンツを区別できない

  1. 症状によって実践しにくいことを頑張らせていないか。動くときなど安全面に配慮しているか。安心につながる声がけや関わりができているか

勉強会を受講してみて

改めて、介護の仕事は専門職であることを確認しました。

私たちは介護のプロ。認知症がある利用者様に不適切なケアはあってはいけません。ベテラン介護士から新人介護士まで、知識・スキルに差があれど『プロ』であることに変わりはありません。

日頃の認知症ケアの実践から学び・気づきを得ることが大事です。さらに、次のケアはより適切なケアができるように、考え行動することが日常化できるようになれば、近い将来、プロの質が高まり、認知症がある利用者様に安心・安全な生活環境を整えることができると思いました。